受賞・表彰
第30回弘前大学医学部学術賞学術特別賞 受賞報告
弘前大学大学院医学研究科整形外科学講座
佐々木 英嗣
この度、第30回弘前大学医学部学術賞学術特別賞に選出いただきましたのでご報告をさせていただきます。まず初めにこのような栄誉ある賞を受賞させていただき大変光栄に存じますし、長年にわたりご指導いただきました石橋教授はじめスポーツグループの先生方、疫学研究にご協力いただきました全ての皆様にこの場をお借りして深謝申しあげます。簡単ではございますが、研究内容のご紹介をさせていただきます。
我々のグループでは「変形性膝関節症(膝OA)に関する疫学調査」を行ってきました。主なフィールドは弘前大学COIを中心に取り組んでいる岩木健康増進プロジェクトになります。2007年に石橋教授の発案によりスタートしたこの疫学調査は初代井上亮先生のご尽力により基礎を作っていただき、これまで大学スタッフおおよび大学院生総動員で調査・研究を継続しております。最近では予防的介入を目的として早期膝OAに注目し、疫学研究でしかできないようなエビデンス構築を目標に研究に取り組んでおります。これまで30本を超える英文論文を公表することができており、本賞受賞におきましてはこれらの研究成果を総合的に評価いただけたものと考えております。
今回、受賞させていただきました研究課題は、「早期変形性膝関節症の病態解明に向けた疫学研究」とさせていただきました。早期膝OAとはX線学的OAの特徴である骨棘形成や関節裂隙狭小化が見られないにもかかわらず膝痛や膝症状を有する状態で、構造的変化が生じる前に早期診断、予防的介入を行う目的で2014年に創出された新たな概念になります。弘前大学では世界に先駆けてこの早期OAに注目し、2016年の岩木健康増進プロジェクトデータで早期OAの判定基準に基づく有病率や危険因子を明らかにしました。X線画像所見ではなく症状自体が重要なOA発症予測因子となることを佐藤英太郎先生が明らかにしました。太田聖也先生は丁寧な膝関節MRI読影から、X線変化が生じる前の膝でもその背後に多くの病的所見が隠れており、半月病変、骨髄病変、滑膜炎が早期OAの主な病態であることを明らかにしてくれました。千葉大輔先生はこれらの病変の中でも半月病変、滑膜炎に注目し、超音波診断装置を用いて半月板逸脱および滑膜炎-水腫の定量評価を長年継続し、OA発症予測に取り組んでいただきました。石橋恭太先生は滑膜炎の程度評価に加え、肥満のある女性と滑膜炎の組み合わせでOA進行リスクが高いことを明らかにしました。骨髄病変に関しては太田聖也先生が低骨密度や骨代謝が関連することを示し、さらに石橋光先生、石橋恭太先生が脛骨アライメントも関連することを明らかにしてくれました。倉諒登先生は膝関節分野の手術において必ず評価が必要となる下肢全長X線画像における詳細なアライメント評価を行い日本人の下肢アライメント標準値を作成してくれました。これらのデータは早期OA膝における手術適応を考えるうえでも重要な判断材料になるデータになると考えております。さらに現在は富田良先生が1500項目に及ぶ環境因子からAIを用いて危険因子解析を行っており、予防につながるデータ解析に尽力してくれています。また、企業研究者や学生と協力しながら、歩行パターンの詳細な解析や代謝との関連、ゲノム解析、肥満との関連など新たな取り組みも行っております。これらの多くの先生方の業績をまとめての本賞受賞となりましたので、私ではなく、これまでご尽力いただきました整形外科の皆様のチーム力でいただいた賞と思っております。改めましてご指導、ご協力いただきました皆様に深く御礼申し上げます。
疫学研究という一見基礎的な分野ではありますが、臨床目線で患者さんにとって有益な研究するという根底・目標を忘れず、研究のための研究で終わらないよう日々精進をしてまいりたいと考えております。まだまだやることがたくさんありますので、ご興味のある先生はお声がけいただき一緒に頑張っていただければ嬉しいです。今後も臨床での疑問に向かい合い、様々な角度から解決に向けて取り組んでいけるよう努力していく所存ですので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。
研究・実績
- 研究内容
- →脊椎・脊髄外科グループ
- →スポーツ整形外科グループ
- →関節グループ
- →手外科・外傷再建グループ
- →骨・軟部腫瘍グループ
- →業績集
- →書籍集
- →受賞・表彰
- →留学寄稿

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