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診療案内:スポーツ整形外科グループ

スポーツ整形外科グループ

スポーツ整形外科グループは、石橋 恭之、津田 英一、山本 祐司、木村 由佳、佐々木 英嗣、對馬 誉大、山内 翔平の7人を中心に診療を行っています。当グループでは主に膝前十字靭帯損傷や複合靭帯損傷、半月板損傷、軟骨損傷、肩関節脱臼、野球肘、疲労骨折(腰椎、上肢、下肢)などスポーツにまつわる外傷、障害の診療と研究を行っています。また、肩、膝の変性疾患に対する治療も行っています。さらに、スポーツにおける障害・外傷についてはその予防にも取り組んでいます。
専門外来は毎週月曜日の午後と木曜日に行っております。近隣の病院や県外からご紹介いただく患者様も多く、より良い医療が提供できるよう日々努力しています。


膝前十字靭帯損傷

膝前十字靭帯(ACL)損傷はスポーツ外傷のなかでも高頻度に発生するとされています。ジャンプからの着地や方向転換、急停止などの動作で受傷することが多く、バスケットボール、バレーボール、スキー、サッカーなどで受傷します。柔道や相撲などでは相手選手との接触により、過度の外力が直接膝に加わり受傷します。
ACL損傷を受傷すると膝関節の不安定性をきたし、これを放置すると半月板損傷や軟骨損傷を生じて、変形性膝関節症の発生頻度が高まることが知られています。
膝関節機能を回復させるためには靭帯の再建手術が必要です。ACL再建術は、自分の体の中のある腱組織片を十字靱帯に置き換えて移植します。この再建靭帯が「新しいACL」になり、膝関節の不安定性を改善し、スポーツ活動や日常生活に復帰することが可能となります。移植腱には、二つの選択肢があります。

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膝関節の構造

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関節鏡でみた正常な前十字靭帯(左)と断裂した靭帯(右)


1. 膝蓋腱

膝蓋骨と脛骨の間にある膝蓋腱の中3分の1を骨付きで採取し、使用するものです。この腱は単独で使用する腱としては最も強度が高く、骨に直接固定するため、早期から積極的なリハビリテーションが可能になります。骨を採取するため、膝前面の痛みがあるとされていますが、当科では骨採取部に骨移植を行うなど痛みを軽減するための工夫を行っています。

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膝蓋腱による前十字靭帯再建術


2. 膝屈筋腱

膝を屈曲するときに作用する筋肉(ハムストリング)のうち、内側の比較的小さな筋の腱を用います。通常は一本採取して半切し、それぞれを折り返して二本並べて移植します。移植腱採取部の痛みが少ないこと、膝伸展筋力の低下が少ないことが利点です。

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膝屈筋腱による前十字靭帯再建術

※移植腱の選択は、膝の状態、スポーツ種目、体格等を総合して判断します(医師とご相談下さい)。入院は1週間程度で、スポーツ復帰までは約9ヶ月です。


半月板損傷

若年者ではスポーツによる外傷が多く、中高年では変性により損傷されることがあります。小児では生まれつきの形で通常より大きく厚い円板状半月とよばれる半月板の場合があり、明らかな外傷なく損傷をきたすことがあります。半月板が損傷されると膝の痛みや可動域制限(膝が伸びない)、腫れの原因になります。MRIで診断し、リハビリテーションなどで症状が治まらない場合には、関節鏡手術で半月板を縫合もしくは部分切除を行います。入院は3日間程度で、スポーツ復帰までは約3-6ヶ月です。

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    断裂して挟まった半月板
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    縫合後

膝蓋骨不安定症

膝蓋骨不安定症とは、膝蓋骨と大腿骨の形の相性が悪かったり、膝蓋骨と脛骨(スネの骨)をつないでいる膝蓋腱の走行に異常があったり、膝蓋骨がずれないようにしている靱帯が緩んでいたり逆にきつ過ぎることにより、膝蓋骨が正常な位置より外側にずれる疾患です。スポーツ活動や日常生活動作で外側に脱臼することもあり(膝蓋骨脱臼)、一度脱臼すると不安定性が強くなり脱臼を繰り返す状態(反復性膝蓋骨脱臼)に移行することがあります。脱臼の際には膝蓋骨と大腿骨の軟骨に傷がついたり、はがれたりすることがあります。何度も脱臼を繰り返すと、軟骨の損傷がすすみ変形性関節症に進行することがあります。保存治療として、筋力訓練などのリハビリテーションや膝サポーターの装着などがありますが、脱臼が反復する場合や不安定感が強い症例には手術を行います。

手術:内側膝蓋大腿靱帯再建術

膝蓋骨が外側にずれないようにしている内側膝蓋大腿靱帯が極端に緩んでいたり、脱臼により切れてしまったことにより膝蓋骨が脱臼する場合には、内側膝蓋大腿靱帯再建術を行います。膝蓋骨の内側に人工靭帯を固定して、皮下を通して大腿骨側に人工靭帯を固定します。膝蓋骨が外側にずれないようにシートベルトのように押さえる効果があります。
通常は術翌日から可動域訓練(曲げ伸ばしの訓練)と松葉杖による歩行訓練を開始します。術後1週頃には膝蓋骨サポーター装着して杖なし歩行が可能となり、退院可能となります。

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離断性骨軟骨炎・軟骨損傷

膝関節の離断性骨軟骨炎は活動性の高い若年者に多く発生します。主因は繰り返す微小外力により、軟骨と軟骨下骨(軟骨の母床)の間に裂離が生じて発症すると考えられています。また、外傷性軟骨損傷ではスポーツで膝を捻るなどのケガをして軟骨が剥離する場合があります。
離断性骨軟骨炎や外傷性軟骨損傷などにより軟骨が損傷すると痛みや腫れが生じます。軟骨がはがれて遊離体になるとひっかかりが生じると関節が動かなくなる場合があります(ロッキング)。軟骨欠損が大きい場合には将来的に変形性関節症へと移行します。
手術治療は、損傷した軟骨の状態に応じて骨穿孔術(骨に小さな穴をいくつかあける方法)、骨軟骨片固定術(はがれかかった軟骨を固定する方法)、自家骨軟骨柱移植術(自分の別の部位から骨軟骨を移植する方法)などが選択されています。自分の軟骨自家培養軟骨移植術(自分の軟骨を一部採取して培養したものを移植する方法)が挙げられます。

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    骨軟骨片固定
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    自家骨軟骨柱移植
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    自家培養軟骨移植

変形性膝関節症

膝の軟骨が摩耗し、多くは内反変形(O脚)となります。薬、注射、装具などで症状が軽快しない場合には手術を選択します。40~60代では骨切り術(骨を切って変形を矯正する手術)、高齢で変形が著しい場合は人工関節置換術を行います。
骨切り術の利点として、自分の膝が温存されるため、術後にスポーツ活動や重労働行っても良いこと、膝の曲がり(関節可動域)が保たれることなどが挙げられます。欠点は骨を切る手術なので、骨癒合に時間がかかること、また人工関節置換術に比べると、除痛までに時間を要することなどが挙げられます。骨切り術では術後2ヶ月ほどで通常の歩行が可能になります。
人工関節では術後数日で歩行訓練を開始し、約3週間で退院できます。人工膝関節置換術ではナビゲーションシステムを用いています。

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    変形性膝関節症
  • スポーツ整形外科グループ
    人工膝関節置換術
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    脛骨高位骨切り術

腱板損傷

ケガやオーバーユース、加齢性の変化などにより断裂します。腱板を損傷すると肩の痛みが続いたり、肩を挙がらなくなることがあります。リハビリテーションなどの保存療法も行いますが、症状の改善がなければ関節鏡を用いて腱板の修復を行います。術後は2-3週間、外転装具で固定しますが、肩関節の拘縮(硬くなること)を予防するため、術後2-3日で疼痛が軽快したら訓練室でリハビリを開始します。入院は約1週間で、仕事の内容にもよりますが、術後3ヶ月頃から復帰できます。

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    腱板断裂部

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    断端に縫合

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    修復後


反復性肩関節脱臼

肩関節脱臼は、ラグビーや柔道などで肩関節を過度に外転(腕を後ろにもっていかれたり)した場合に発生します。脱臼した肩は、病院などで整復(脱臼を戻すこと)を必要とすることもありますが、自然に戻ることもあります。若い人では高率に反復性脱臼に移行します(10歳代で90%、20歳代で70-80%といわれています)。反復性脱臼では関節の前下方の靭帯が剥離していることが多く、再発する脱臼・亜脱臼に対しては、関節鏡を用いて剥がれた組織の修復を行います。入院は約3日間でスポーツ復帰までは約6ヶ月です。

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    剥離した前方関節唇

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    鏡視下に固定中
  • スポーツ整形外科グループ
    修復後

手術実績

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
膝靭帯再建術 103 122 106 107 95 108 90 86
半月板手術 53 47 53 29 23 40 36 42
軟骨修復術 (骨片固定、自家骨軟骨柱移植術) 7 16 8 6 5 19 7 3
自家培養軟骨移植術 1 1 1 1 1 4 3 1
膝蓋骨不安定症に対する手術 10 5 16 21 13 19 16 17
人工膝関節置換術 19 17 29 25 24 27 29 28
膝周囲骨切り術 9 13 13 12 9 10 15 42
鏡視下バンカート修復術 17 19 11 20 13 6 12 9
鏡視下腱板修復術 40 39 32 36 23 29 44 73
自家骨軟骨柱移植術 15 10 12 8 11 9 9 4
足関節
距骨骨軟骨損傷 3 7 3 4 3 2 4 3

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