受賞・表彰

第53回日本人工関節学会 一般口演優秀演題賞受賞報告

八戸市立市民病院整形外科 荒木 亮

 この度2023年2月17、18日にパシフィコ横浜で開催された、第53回日本人工関節学会において一般口演優秀演題賞を受賞いたしましたのでご報告させて頂きます。
 私の演題は「末期変形性膝関節症におけるBone Marrow Lesionと脛骨近位骨密度との関係」です。変形性膝関節症(膝OA)におけるBMLは出血、血管新生、骨リモデリング、微小骨折などを反映したMRI画像で検出される所見です。臨床的には膝OAの重症度や荷重時痛、関節列隙狭小化と関連することが分かっています。当科ではこれまでに岩木健康増進プロジェクト健診で早期膝OAを対象とした調査を行い、早期膝OAにおけるBMLは骨脆弱性を示唆する所見であることを明らかにしています。今回我々は末期膝OAにおけるBMLと脛骨近位骨密度との関連を調査いたしました。対象は2007年11月から2018年9月の間に弘前記念病院で人工膝関節置換術(TKA)を施行した1307膝です。膝関節を大腿骨内・外側顆部(MFC、LFC)、脛骨内・外側高原(MTP、LTP)に分け、Whole -Organ Magnetic Resonance Imaging Score(WORMS)を用いてBMLのサイズを点数化しました。またX線画像評価としてFTAを測定し、DEXA法を用いて脛骨近位内・外側高原(MTP、LTP)、脛骨近位骨幹端(Met.)の骨密度を測定しました。MTP、LTPのBMLスコアを従属変数とした線形回帰分析ではMTPのBMLスコアに対してMTPの骨密度が正の関連を示していました。またFTAと骨密度のMTP/LTP比に正の相関関係を認めました。これらの結果から末期膝OAでは内反変形の進行に伴いMTPの骨密度が上昇すること、BMLスコアが高値であるほど脛骨近位内側部の骨密度が高値であることが明らかとなりました。早期膝OAと異なり、末期膝OAにおいては広範なBMLは必ずしも骨脆弱性を反映した変化ではないことが示唆され、人工関節置換術の術前計画の一助となる可能性があると考えられました。
 今回の受賞にあたり研究、発表のご指導をしていただいた石橋教授に心より感謝申し上げます。また本結果は弘前記念病院の膨大な症例の蓄積により成り立っております。佐々木知行先生をはじめとした弘前記念病院の先生方ならびに研究テーマの発案から解析、発表など細部にわたりご指導頂いた佐々木英嗣先生にこの場をお借りして深謝いたします。

第53回日本人工関節学会 一般口演優秀演題賞受賞報告

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