留学紀行

マイアミ大学留学報告 田中 直(平成16年卒)

 平成26年4月より1年間、米国フロリダ州のUniversity of Miamiの中にあるThe Miami Project to Cure Paralysisという部署で、Dietrich教授のもと脊髄再生の基礎研究に参加させていただきました。Miami Projectは1985年、アメリカンフットボールの名選手であったNick Buoniconti氏が、息子Marc氏がアメフトにて脊髄損傷を受傷したのを契機に基金を設立し立ち上げたプロジェクトで、脳・脊髄の再生を目指している世界有数の大規模リサーチセンターです。
 Lois Pope LIFE Center という7階建ての建物の中で、200人を超える研究者、医師、理学療法士、各施設のスタッフが仕事をしています。その中には理学療法室、オフィス、実験室、動物実験施設、講演会用のホールなどがあり、一つの建物で基礎研究から臨床研究まで、皆が一丸となって研究を行っている雰囲気が伝わってきます。
 基礎研究分野は、202を超える研究責任者(PI; Principal investigator)を核として、Ph.Dスタッフ、ポスドク、留学生、大学院生、学部学生が配属され、様々なアプローチから研究が行われています。Miami Projectでは、「神経科学者を世界各地に送り出すことで、世界中で神経再生という難題に立ち向かおう」という理念のもと世界各地から研究者・留学生を受け入れており、ラボは非常に国際色に富んだメンバーで構成されています。
 臨床研究としては、シュワン細胞移植、ヒト神経幹細胞移植など、脊髄再生を目的としたいくつかの治験が進行中です。私はこれまで整形外科医として様々な脊損患者様の初療から手術、リハビリテーションを担当させていただく機会がありましたが、その治療に限界があることの悔しさを、患者様と共に感じる場面に幾度となく遭遇してきました。中枢神経を完全に回復させるということは私たち人類にとってまだまだ乗り越えられない大きな壁ですが、「Never give up」を合言葉に日々研究に励んでいる人々を目の当たりにすると、そう遠くない未来にそれが可能となる時代が訪れるかもしれないと希望が湧いてきます。
 フロリダ州は別名sunshine stateとも呼ばれ、年間を通じ毎月の平均気温が25℃を超える非常に温暖な土地で、米国の中でも数少ない海に囲まれた州ということもあり、マイアミ・ビーチは世界各地からの観光客でにぎわっています。南米に近いためラテンの香りが漂うマイアミには、陽気で明るい人が多い印象があります。
 1年間の海外での生活は、自分自身や家族を見つめる貴重な機会となりました。また、米国における最先端の基礎研究・臨床に触れた経験は、今後の私にとって大きな糧となることと思います。最後に、ラボの玄関口にある噴水に刻まれている言葉を紹介します。映画「スーパーマン」の主役を演じ、後に落馬により頚髄損傷を受傷し半身不随となってしまった俳優Christopher Reeveの言葉です。「So many of our dreams at first seem impossible, then they seem improbable, and then, when we summon the will, they soon become inevitable」(多くの夢は、初めは不可能で、起こりそうにないことのように思えるが、我々が意志を奮い立たせるとき、それは必然となる)。
 このような貴重な経験をする機会を与えてくださった、石橋 教授および教室員の先生方、同門会である整志会の川岸会長はじめ会員の先生方に心より感謝申し上げます。

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